論理的思考力について

そもそも論理とは?

論理的思考力について考える前に、そもそも「論理」とは何でしょうか?

インターネットで「論理とは?」と調べてみると、

  • 考えや議論などを進めていく筋道
  • 思考や論証の組み立て
  • 思考の妥当性が保証される法則や形式

とあります。

 

「論」には「議論する」という意味、「理」には「ことわり・道理」という意味がありますので、「論理」とは「道理に基づいて(≒筋の通った)議論をする」と読み取ることができます。

 

では、「論理的」とはどのようなことを言うのでしょうか?

 

「~的」という言葉には、「~のような性質」という意味が含まれますので、「論理的」とは、きちんと筋道立てて(順序立てて、正しい順序で)考える様子や推論したりする様子のことを指す言葉となります。

「論理的」と「理論的」は同じか?

 

 「論理的」と似た言葉に「理論的」という言葉がありますが、2つとも同じ意味で使える言葉なのでしょうか?

 

結論から言うと、両者は意味が違います。

 

「理論」というのは、何らかの現実的な事象・現象が先にあって、それを説明するために帰納的な論理によって導き出された法則のことを言います。つまり、「理論的」とは、事実に基づいた法則を使って考えることを表します。 そのため、「理論的に正しい」とか「理論的に間違っている」というように「〇」か「×」かの評価ができるのも特徴です。

 

一方、「論理的」とは、上述したように「筋道を立てて論考すること」なので、必ずも「理論的」でなくても構いません。自分が正しいと思っている事柄があって、それを筋道を立てて論考することを言います。

 

少し具体的にいうと、

①地球の自転周期や公転周期は、学問として確立している以上、法則として使って問題がないため、この法則を使って考えをまとめれば理論的と言える。

②検察が裁判で被疑者のアリバイを崩すという場合、「被疑者は〇月〇日当時はバイクを所有していて、事件現場まで往復で〇〇時間だから十分犯行は可能だった」というように、いろいろな条件を組み合わせることで理屈が成り立つ場合、理論とは関係がなくても論理の構築は可能となります。

 

ところで、「論理的」というのは「理屈っぽい」と同じことなのでしょうか?

 

同じものと思われていることも多いかもしれませんが、それは誤解です

 

「論理的」と「理屈っぽい」は、どちらとも筋道が通っていることは確かですが、決定的な違いは「客観的であるかどうか」です論理的というのは、誰が聞いても筋道が通っていることです。一方で「理屈っぽい」というのは、自己満足的に筋道が通っていることであって「主観的」である状態を言います。極端に言えば、都合がいい話だけを並べて自分の頭の中だけで話をつなげて論理立てていることが多いのです。他者はそれを簡単に見透かしてしまうので、いわゆる「屁理屈」ということになってしまいます。

 

「論理的」であるためには「客観的」である必要があります。

 

それでは次に、「論理的思考」について見てみましょう。

論理的思考とは?

論理的思考とは、「因果(原因と結果の)関係を整理し、順序立てて考えること」を指します。「ロジカルシンキング」とも呼ばれます。

 

その逆の思考は「直観的思考」です。

例えば、普段の生活の中で何かに迷ったあげく、結局最後はエイヤっ!でものごとを決めることって意外とあると思います。それがまさに直感的思考を行っている状態です。

 

ロジカルシンキングができる人の話は、客観的で分かりやすく説得力があるため、周囲の人から信頼を得やすくなります。逆にロジカルシンキングができない人の話は、「話がずれている・・・」「何が言いたいのかよく分からない・・・」となってしまいがちです。

 

論理的思考ができているというのは、「結論に対して違和感なく根拠を示せている状態」という言い方ができます。

 

 

では、できる人とできない人との差は何なのでしょうか?

 

次に、論理的思考(ロジカルシンキング)ができない人の特徴を見てみましょう。

論理的思考ができない人の特徴

誰かと話をしている時に、話が長いわりに言いたいことが理解できず、「この人結局何が言いたいんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?

 

相手の話を一生懸命聞いているのに、なかなか結論が見えてこない時に感じる気持ちです。話のポイントや結論がつかめないため、聞く人が負担を感じてしまうのです。

 

これには、日本語の文法に慣れすぎてしまっていることにも原因の一端があるかもしれません。日本語の場合は「〇〇だから□□です。」というように「理由を先にして結論を最後に置く」話の組み立てになりますが、例えば英語の場合は「□□です、なぜなら〇〇だからです。」というように「結論を先にして理由は後に置く」話の組み立てが主流になります。そのため、欧米人などからは「日本人の話は、なかなか結論が見えなくてイライラする。」という意見も一部にはあるようです。

 

だからと言って、日本人が論理的思考ができないという話ではなく、論理的思考ができる人はこのような違いを意識して使い分けることが出来ているということです。

 

それでは、以下に論理的思考(ロジカルシンキング)ができない人の特徴を示します。

話の結論までが長い

誰かがあなたに一生懸命説明しているとします。その人はとても熱心に話していることは分かっているのですが、結論にたどり着くまでのいきさつを長々と話しています。

 

あなたには時間が無いため、早く結論を知って次の行動や判断に移りたいのですが、こんな時どう思うでしょうか?

 

普段の雑談であれば、それでもいいのですが、重大なことだった場合にそれだと困りますよね。

 

または、自分が逆の立場だとして、相手から「で、結局何が言いたいの?」と問いかけられた場合、「つまり、こういうことです!」と即座に答えられるでしょうか?

 

できるならばよいですが、それができない人がいます。

 

これは、話している人自身が自分の中で要点が整理できていないことが原因となっています。

 

つまり、「何をどういう風に話せば理解されやすいのか?」、「何にどう答えればいいのか?」が自分自身でもはっきり分かっていない状態なのです。

積み上げ思考

積み上げ思考とは、「今できることをやれば、成果につながるだろう」という考え方です。

 

 たとえば、「誰かに言われたからやる」、「たまたま本で読んで知ったから、とにかくやってみる」。これらの行動は積み上げ思考になりがちです。

 

一見、正しいように見えるかもしれませんし、たまたま成果を出せるかしれません。しかし、その行動によって出した成果に対して「なぜ成果が出せたのか?」の根拠が不明確です。上手くいった理由を本人も説明できないでしょう。

 

これでは、その後もいつでも同じように成果が出せるかは分かりません。

 

積み上げ思考になりがちな人は、筋道を立てて考えるのが苦手で論理的に考えることを避けてしまうという特徴があります(本人は気づいていない場合がほとんどです)。

 

つまり、積み上げ思考とは、現在(の状況がこうだからこうすべき)からスタートして、今できることを積み上げて考えを進めていくことを指します。

 

現時点でできることを積み重ねていくだけで過去分析(今の状態は過去の因果関係の到達点)をしないので、ロジカルシンキングを必要としません。

 

素直でない

日常生活においても仕事においても、間違いを指摘されたり、やり直しをさせられることがあります。

 

そのようなときに「そういう考えもあるのかもしれないな」などと、素直に思える人はロジカルシンキングのスキルを伸ばすことができます。

 

しかし、「自分の方が正しい」「あいつは何も分かっていない」などと決めつけてしまう人は、ロジカルシンキングのスキルを伸ばすことはできません。

 

ロジカルシンキングは、考え抜いて相手の指摘や批判を乗り越えていく力でもあるため、相手の批判を拒絶するだけで受け止められない人は成長の種を自ら放棄しているためです。

 

これは論理的思考力に限ったことではなく、相手を批判だけして済まそうというやり方は、自らを思考停止状態、つまり考えることを放棄した状態に陥らせてしまうため、そこから先の成長にはつながらないのです。

例え話が苦手

ロジカルシンキングができる人は、「例えば〇〇だったら~」「もしこうだったら~」と仮説を立てて物事を考えることを習慣にしていたり、自然と考えるクセがついています。

 

しかし、ロジカルシンキングができない人は、「もしこうだったら~こうなるのでは?」と仮説を立てて考える習慣が身についていません。

 

そのため、相手の意見や批判に対して、説得力を持って核心的な回答をすることができません。

 

たとえば、「こういう可能性はないの?」と質問された際に「その答えは□□です。理由は~」と結論を先に答えることができずに、「この問題は△△~」などと質問のポイントとは関係ないことを話し始めたり、背景や理由の説明をしたりしてしまいます。

 

これは、ロジカルシンキングが身についていない、相手の質問が何を意図としたものなのかを見分けることができていないからです

 

逆にロジカルシンキングが得意な人は、話の内容を他の言葉で言い換えたり、要点だけを取り出してまとめて会話することができます。これは、話の細かい部分を抽象化して考える力が高いとも言えます。そのため、例え話が得意なのです。

 

つまり、例え話が得意な人は、物事の本質を理解して俯瞰できている(抽象度の高い状態でも理解している)ということです。逆に、例え話が苦手な人は、話の内容や起こっている事象の全体像を理解したり見渡す力が不足しているので、他の言葉に言い換えるのが苦手なのです。

論理的思考ができる人の特徴

論理的思考(ロジカルシンキング)とは、物ごとの筋道を立てて考え、一貫した筋の通った話や説明ができる力やスキルのことです。

 

直感やひらめきだけでなく、きちんと根拠がある考えができる方は、論理的思考力が高いと言えます。

 

では、この論理的思考力が高い方にはどのような特徴があるのでしょうか。

 

以下に論理的思考(ロジカルシンキング)ができる人の特徴を示します。

自分の考えを説明できる

論理的思考ができる人は、自分の考えを正確な言葉に置き換えて、相手に説明することができます。

 

これは、1つ1つの単語の意味や単語の意味が及ぼす影響範囲を理解しているため、きちんと使いこなせていると言うことです。

 

また、使っている単語にあいまいさが残る場合は、他の単語(修飾語など)と組み合わせることで、できるだけあいまいな部分を残さないような工夫も行うことができます。

 

話の中の1つの事柄において、単純な回答だけではなく、なぜ・どのようにしてその回答に行き着いたのかを説明することができ、また、必要に応じて出来るだけ具体的に、相手に伝わりやすい言葉を柔軟に選んで説明することができます。

相手の考えを理解できる

論理的思考力が高くなると、自分の考えだけでなく相手の思考も考えることができます。

 

相手の言葉から相手の考えていることを自分の頭の中で再構築できるので、相手の考えを理解することができるのです。

 

さらに相手の考えを先読みして、テンポよくスムーズなやり取りができるようになります。自分の言いたいことと相手の言いたいことを同時に頭の中で考えることができている状態です。スムーズなやり取りをするためには、相手も論理的思考ができることが条件になりますが。

 

そのため、ロジカルシンキングできる人との会話では、分かりやすい・話しやすいと感じることができます。

 

一方で、余計な説明までしなければ話が進まないという場合は、あなたか相手のどちらかが論理的思考力が低いということが言えます。

複数の作業を同時にできる

論理的思考力が高い人は複数の作業を同時に行うことができます。

 

無駄が少なく効率的に物事を考えたり、考えを切り替えたりできる(いわゆる頭の回転が速い)ので余裕があり、様々なことを同時進行することができるのです。

 

様々なことを効率的に行うことができるので、作業の時間を短縮することが可能で、余った時間を他のことに使うことができるようになります。

 

※補足ですが、本当の意味で同時に作業をできるわけではありません。パソコンのCPUで言うとマルチタスクに相当するもので、例えば、3つの作業を行っているとき、実際には3つのうちの1つ目の作業中には他の2つは作業を行っていません。ただし、1つ目の作業を少し進めたら2つ目の作業に移り、2つ目の作業を少し進めたら3つ目の作業に移り、というのを素早く繰り返すことで3つの作業を同時進行しているように見える、ということです。

逆算思考で論理的な会話ができる

先に述べた積み上げ思考の反対の考え方に「逆算思考」があります。

 

逆算思考をする人は、課題とゴール(目標)を区別したうえでゴール(目標)に必要なことを考えて行動することができます。そのため、いつでも必要なことを整理でき、継続して成果を出すことが可能になります。

 

逆算思考は、筋道を立てて考える必要があるため、論理的思考(ロジカルシンキング)を行っています。

 

もちろん、社会に出ると役に立つ、というか、必須となるのは逆算思考の方です。課題を解決するには何が必要?ノルマを達成するには何が必要?と、常に考えて順序立てて整理してから行動する必要があるためです。

 

また、逆算思考ができる人は、会話の内容も論理的です。

 

自分の感情や何となくの直感ではなく、きちんとポイントを押さえて会話をすることができます。

 

喋るのが上手な人、話の運び方が上手い人、話の内容が分かりやすく他人に教えるのも上手い人、作業を効率よくやる人なども論理的思考力が高いと言えます。

論理的思考を身につけるには?

今現在、論理的思考(ロジカルシンキング)に自信がなくても、コツを覚えて練習することでスキルを伸ばすことができます。

 

それでは、論理的思考(ロジカルシンキング)ができるようになるコツを見ていきましょう。

結論から述べる

話をする際には、まず結論から始めることは、論理的思考力を身に着けるために実践した方がよい最も重要なポイントです。

 

話をしている途中で、話題を広げたはいいものの、そこから戻れなくなって結局自分が何を話したかったのか分からなくなってしまったことはありませんか?

 

そういうことを避ける意味でも、結論から話をすることで自分の頭の中に話の到達点(結論)を置くことで、ストーリーをすっきりと整理することができます。

 

また、結論が最初に分かった方が、話を聞く側の負担を減らすことにもなります。

 

 

人にわかりやすく説明することに苦手意識をもっている人は、結論を最初に話すことから始めてみてください。

 

話す順番に型をつくることも良い方法です。例えば、司会や人に説明する立場になった場合、こう言ってから始めてみると良いでしょう。

 

「今回話す内容は〇〇についてです。それに対する結論は△△です。その理由は3つあります。」

 

冒頭で、こういう風に話すことで、聞いている人たちは話の内容の概要(アウトライン)を把握した上で詳細を聞くことになるため、理解しやすくなります。

【なぜ?】を繰り返す

結論を最初に伝えたら、その次は、その結論にたどり着くまでの説明を行うわけですが、「何でその結論になったのか?」その理由を深く掘り下げていって説明するようにしましょう。

 

そのためには、「なぜ?」を自問自答することが重要です。そのことで理由が整理され、まず自分が理解しやすくなります。

 

(1)「なぜ、その結論になったのか?」→「〇〇が理由だったからです。」

 

(2)「ではなぜ、〇〇が理由だと言えるのか?」→「△△のためです。」

 

(3)「では△△の原因は何だったのか?」→「それは□□が真の原因だからです。」

 

このようにすることで、誰もが納得できる話を展開することができるようになります。

調べるクセをつける

論理的思考(ロジカルシンキング)のスキルを高めるには、知識を増やすこともとても重要です。

 

知識を増やすことで、考えの幅を広げることができます。

 

例え話が苦手」の項で述べましたが、例え話が上手くなるにはそれなりに知識がないとできないスキルでもあります。

 

分からないことを分からないままにしておいても、自分にメリットはありません。

 

今は、ネット検索を使えばどのような情報でも手軽に入手できる環境がありますので、分からないことがあったらまず調べるクセをつけましょう。

 

ただし、正しい情報や本当に価値のある情報を見分ける力量も同時に必要です。フェイク(虚偽の)情報に惑わされないように注意を払うようにしましょう。

 

論理的思考力のメリット

問題解決力がつく

論理的思考(ロジカルシンキング)ができるようになると、何が問題(課題)なのか、どのような解決策(結論)があるのか、筋道を立てて考えられるようになります。

 

また、複数の観点から問題を見ることができるようになるため、複雑な問題でも分解して1つ1つを丁寧に理解できるようになり、問題解決力が高くなります。

説得力がつく

論理的思考(ロジカルシンキング)を身につけることで問題解決力を高めるだけでなく、相手にわかりやすく説得力のある説明ができるようになります。

 

また、質問に対しても的確な回答をすることができるようになります。

コミュニケーション力がつく

他人とのコミュニケーションは、相手に理解してもらうこと、納得してもらうことが非常に大切です。

 

論理的思考(ロジカルシンキング)を鍛えることで相手の考えていることも理解できるようになり、より上手に人間関係を築いていくことができるようになります。

 

例えば、相手が今不機嫌なのはどうしてなのか、そうさせないためにどのように行動すればいいのかという解決策を見い出すことができるようになります。

論理的思考のトレーニング

 

ここまで、論理的思考(ロジカルシンキング)全般についてご説明してきました。

 

小さい頃から論理的思考力を鍛えておくと、今後の学習や人間関係の形成において大きく役に立ちます。

 

逆に、 社会人であっても「積み上げ思考」から脱することができず、ちぐはぐな説明ばかりするような人もいます。

 

いずれにしても、論理的思考ができない人よりも出来る人の方が、圧倒的に物事を有利に運ぶことができる世の中です。結果、人生そのものの方向性にも大きな影響を与えるものとなります。

 

以下にご紹介する書籍は、トレーニングを始めてみるには適切かと思います。

 

また、論理的思考力を高めるためには、プログラミングが有効なツールとなります。

 

たとえば、自分でゲームを作る場合、登場人物、セリフ、動作、イベント、背景など、たくさんの要素を考えます。それら1つ1つに命を吹き込むように細かい情報を設定する必要があります。プログラミングの場合、それら1つ1つの設定情報とそれらの人や物体が周りに及ぼす影響を正確に設定しなければ、正しく動いてくれません。プログラムは、書かれたとおりにしか実行してくれず、忖度など一切通用しない世界のためです。この「あいまいさを絶対に許さない」のがプログラミングの世界であって「正確さを強制される」ものなのです。このように、課題を達成するために、要素に分解して、それぞれの要素に対する情報を正確に整理して、最後に統合して答えを導くプロセスが、まさに論理的思考そのものであるので、その意味でプログラミングは有効なツールであると言えます。